【超入門】ヨーロッパで始まった「包装の新ルール」とは?~化粧品にも関係するEU包装規則(PPWR)と、アメリカ輸出への意外な影響~

「海外のパッケージ規制が厳しくなっているらしい」という話を耳にする機会が増えていませんか?

2026年8月12日、欧州連合(EU)で「PPWR(包装および包装廃棄物規則)」の適用が開始されました。
PPWRは、食品や日用品だけでなく、スキンケアやメイクアップなどの化粧品に使用される包装にも関係する、EU全体の包装に関する新しいルールです。
また、日本などEU域外で製造された商品であっても、EU市場に上市される包装については、PPWRの対象となる場合があります。
「欧州向けに本格展開していないから関係ない」と思われるかもしれません。
しかし、実はアメリカ市場向けに商品を販売・輸出している事業者にとっても、参考にしておきたい重要な変化です。
なぜなら、アメリカでも州レベルで包装のEPR(拡大生産者責任)やPFAS規制などが広がっているからです。
ここでは、初心者の方にもわかりやすく、PPWRの基本と、米国輸出事業者が知っておきたいポイントを解説します。
1. PPWR(包装廃棄物規則)を一言でいうと?

PPWR(Packaging and Packaging Waste Regulation)は、EU域内で使用される包装について、包装廃棄物の削減、リサイクル可能性の向上、再生材の利用、過剰包装の削減などを進めるためのEU共通ルールです。
これまでの自主的な取り組みだけではなく、一定の要件について法的拘束力を持つ規則として、EU加盟国で直接適用されます。
ただし、すべての要件が2026年8月12日から一斉に義務化されたわけではありません。
リサイクル可能性、再生プラスチック、表示、過剰包装などについて、今後数年間にわたって段階的に要件が導入されます。
主なポイントは次のとおりです。
● 包装廃棄物の削減
EU加盟国は、2018年を基準として、包装廃棄物を
- 2030年までに5%
- 2035年までに10%
- 2040年までに15%
削減することを目指します。
これは、個々の企業が自社の包装を必ず5%削減するという意味ではなく、EU加盟国全体として包装廃棄物を削減するための目標です。
● リサイクル可能な包装へ
包装について、リサイクル可能性を確保するためのルールが導入されます。
2030年以降は、包装のリサイクル性能について具体的な基準が適用され、2038年にはさらに厳しい基準が導入される予定です。
そのため、今後は単に「プラスチックだからリサイクルできる」という考え方ではなく、実際のリサイクルシステムで処理できる設計になっているかが重要になります。
● 再生プラスチックの使用

プラスチック包装については、包装の種類や用途に応じて、一定割合以上の再生プラスチックを使用することが求められるようになります。
適用される割合は包装の種類によって異なるため、「すべてのプラスチック包装に一律○%」という単純なルールではありません。
● 過剰包装の削減
特定のグループ包装、輸送包装、e-commerce包装について、2030年以降、包装内部の空間を原則として50%以下にするなど、過剰包装を抑制するための要件が導入されます。
つまり、商品の大きさに対して必要以上に大きな箱を使用したり、大量の緩衝材を入れたりする設計について、見直しが求められる可能性があります。
● PFASなどの化学物質
食品接触包装については、一定濃度以上のPFAS(有機フッ素化合物)を含む包装の市場投入が禁止されます。
ここで注意したいのは、PPWRがすべての化粧品容器についてPFASを一律禁止する規則ではないという点です。
化粧品包装について化学物質を確認する場合には、PPWRだけでなく、用途や販売国・地域に応じた別の規制も確認する必要があります。
2. 化粧品にも関係する?何が見直される?

「PPWRは食品や飲料の包装の話」と思われがちですが、そうではありません。
PPWRは、包装そのものを対象とする横断的な規則であるため、化粧品に使用される包装も、PPWR上の「包装」に該当すれば対象となります。
例えば、
- 化粧水・美容液のボトル
- クリームのジャー
- チューブ
- キャップ
- 化粧箱
- その他の外装・包装材
などが対象となる可能性があります。
ただし、ここでも重要なのは、2026年8月12日からすべての化粧品包装について新しい要件が一斉に適用されるわけではないということです。
今後、段階的に導入される要件を見据えて、早めに包装設計やサプライヤー情報を整理しておくことが重要です。
● EPR(拡大生産者責任)
PPWRでは、包装をEU域内で初めて市場に提供する事業者などに対して、EPRに関する登録、報告、費用負担などの仕組みが設けられます。
そのため、EUで化粧品を販売する場合には、単に「容器の材質が何か」を確認するだけでなく、誰が包装のproducerとして責任を負うのかという点も重要になります。
● 包装材の情報・技術文書
今後の規制対応では、
- 容器・包装の材質
- 各部材の重量
- プラスチックの種類
- 再生材の含有率
- リサイクル可能性
- 規制対象物質に関する情報
などを把握しておくことが重要になります。
そのため、容器メーカーや化粧箱メーカーなどのサプライヤーから、必要な技術情報や証明資料を取得できる体制を作っておくと安心です。
● リサイクル可能性・表示への対応

今後、包装のリサイクル性能を評価するための基準や、包装材質を示す調和された表示などが導入されます。
また、包装の種類によってはQRコードなどのデジタル情報提供が関係する場合もあります。
ただし、「2026年8月からすべての化粧品包装にQRコードが義務化される」という意味ではありません。
包装の種類や制度ごとに適用時期・要件が異なるため、個別に確認する必要があります。
3. なぜ「アメリカ向け輸出」にも影響するの?
「EUの法律なのに、なぜアメリカ輸出に関係するの?」
そう思われるかもしれません。
もちろん、EUのPPWRがそのままアメリカで適用されるわけではありません。
しかし、米国でも包装に関する環境規制が州単位で広がっており、今後アメリカで販売する日本企業にとっても、PPWRの動向は参考にしておく価値があります。
主な理由は3つあります。
① アメリカでも州レベルの包装EPRが拡大している
アメリカには、EUのような包装に関する全国一律のEPR制度はありません。
一方で、州レベルでは包装を対象としたEPR制度が導入されています。
例えば、
- California
- Oregon
- Washington
などでは、包装・紙製品などを対象としたEPR制度が導入・実施されています。
つまり、アメリカで商品を販売する場合でも、「連邦法だけ確認すればよい」という状況ではなく、販売する州によって包装に関する義務が発生する可能性があります。
② PFASなどの化学物質規制も広がっている
アメリカでは、州によって包装に含まれるPFASなどの化学物質を規制する動きがあります。
また、カリフォルニア州のProp 65(Proposition 65)のように、製品や包装に含まれる特定の化学物質について、一定の条件で警告表示が問題になる制度もあります。
ただし、Prop 65は包装EPRやPPWRとは別の制度です。
「リサイクルできるか」という問題と、「特定の化学物質について警告が必要か」という問題は、分けて考える必要があります。
③ パッケージを国別に分けるとコストがかかる
日本、EU、アメリカでそれぞれ異なる包装を用意すると、
- 容器の製造ロット
- 化粧箱の印刷
- ラベル
- 在庫管理
- 包装資材の管理
- 法規制チェック
などのコストが増える可能性があります。
そのため、複数の国・地域に輸出する企業では、可能な範囲で包装仕様を共通化することが、コスト削減につながる場合があります。
ただし、EUのPPWRに適合すればアメリカでも自動的に適法になるわけではありません。
EUとアメリカでは規制体系が異なるため、それぞれの市場について個別に確認する必要があります。
4. Amazon USにも関係する?

アメリカでEC販売を行っている企業にとって、Amazonの包装方針も参考になります。
Amazonでは「Frustration-Free Packaging(FFP)」という独自の包装プログラムがあり、開封しやすいことや、包装材の削減、リサイクル可能な包装などが重視されています。
これはAmazon独自の取り組みであり、PPWRの法的要件ではありません。
ただし、
- 過剰包装を減らす
- 無駄な空間を減らす
- 不要な包装材を減らす
- リサイクルしやすい包装を採用する
という方向性には共通する部分があります。
そのため、Amazon US向け商品の包装を見直す際にも、こうした世界的な包装規制・市場動向を参考にする価値があります。
5. 事業者が今から進めておきたい実務ステップ
「まだEUで販売していないから何もしなくていい」と考えるのではなく、将来的な海外展開を考えているのであれば、まずは現在の包装を把握するところから始めるとよいでしょう。

① 現行パッケージの仕様・材質を整理する
まず、
- ボトル
- チューブ
- ジャー
- キャップ
- ポンプ
- 化粧箱
- 緩衝材
- 輸送用包装
などについて、素材・重量・構造を整理します。
例えば、プラスチック容器であれば、単に「プラスチック」とするのではなく、可能な範囲で樹脂の種類まで把握しておくとよいでしょう。
② 包材サプライヤーから情報を集める
容器・包装資材メーカーに、
- 材質
- 重量
- 再生材含有率
- リサイクル可能性に関する情報
- 規制対象物質に関する情報
などを確認します。
特に海外展開を予定している場合、後から必要な情報を集めるのではなく、今のうちから包装材の仕様書や証明資料を整理しておくことが重要です。
③ 単一素材化・コンパクト設計を検討する
可能であれば、
- 異なる素材を組み合わせた構造の見直し
- モノマテリアル化
- 不要な包装材の削減
- 過剰な外箱の見直し
- 輸送時の空間削減
などを検討します。
ただし、「単一素材なら必ずPPWRに適合する」というわけではありません。
実際のリサイクルシステムや包装の構造、材質、用途などを含めて総合的に判断する必要があります。
6. EUとアメリカ、これからの海外包装規制をどう考える?
PPWRはEUの法律です。
したがって、
「EUに輸出しない日本企業にはPPWRが直接適用される」
という意味ではありません。
しかし、世界的に見ると、包装について
- 廃棄物を減らす
- リサイクルしやすくする
- 再生材を利用する
- 過剰包装を減らす
- EPRによって事業者にも責任を求める
- 特定の化学物質を規制する
という方向に規制が進んでいます。
EUのPPWRとアメリカ各州の制度は同じものではありません。
それでも、海外展開を行う企業にとって「包装そのものを見直す必要性が高まっている」という大きな流れは共通しています。
複数市場への輸出を予定しているのであれば、最初から各国向けにまったく異なる包装を作るのではなく、できる範囲で共通化できる仕様を検討することも一つの方法です。
ただし、最終的には販売する国・州ごとの規制を個別に確認することが必要です。
まとめ

2026年8月12日から適用が始まったEUのPPWRは、単なる「EUのリサイクルルール」ではありません。
包装廃棄物の削減、リサイクル可能性、再生プラスチック、過剰包装、EPRなど、商品の「中身」だけでなく「包み方」そのものを見直すことにつながる大きな制度変更です。
そして、これはEUだけの動きではありません。
アメリカでも州単位で包装EPRや化学物質規制などが広がっています。
そのため、アメリカへの輸出を考えている企業にとっても、
「商品がアメリカの規制に適合しているか」だけでなく、「その商品の包装は将来的な環境規制に対応できる設計になっているか」
という視点が、これからますます重要になってくるでしょう。
海外展開を予定しているのであれば、まずは現在使用している容器・化粧箱・緩衝材などの材質・重量・構造を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

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