アメリカで食品を輸出するときに欠かせない「GRAS」とは?|原材料の安全性を確認するための実務ガイド

目次

はじめに:「日本で問題なく販売できている食品だから、アメリカでも大丈夫」と思っていませんか?

日本の食品をアメリカへ輸出しようと検討し始めた方から、こんなご相談を受けることが増えています。

「原料は国内で長年使ってきたものばかり。バイヤーにも『GRASは問題ないですよね?』と聞かれたが、そもそもGRASをどう確認すればいいのか分からない」

実は、抹茶、だし、特定保健用食品の関与成分、植物抽出エキス、発酵調味料、和菓子用の着色料など、日本国内では何の問題もなく流通している原材料でも要注意です。アメリカに輸出する段階になると、「その原材料をアメリカで食品として使ってよい法的根拠があるか」を、ひとつずつ確認する必要が出てきます。

この確認作業の中心にあるのが GRAS(Generally Recognized As Safe) という考え方です。

本記事は、アメリカへの食品輸出を初めて検討される事業者の方向けに、GRASの本質と実務上の確認手順を、FDA(米国食品医薬品局)の公式情報に沿ってやさしく整理しました。

1. GRASとは? — まずは法的な位置づけから

GRAS“Generally Recognized As Safe” の略で、

日本語にすると「意図された用途・使用条件のもとで、専門家によって一般に安全と認められている」という意味になります。

少し硬い表現ですが、要は「その使い方であれば、専門家の間で安全だと広く認められている状態」ということです。

この考え方は、次の法律・規則に基づいています。

  • FD&C Act(連邦食品・医薬品・化粧品法)Section 201(s) および Section 409:食品に意図的に加える物質は、原則として「食品添加物(Food Additive)」とされ、FDAの市販前承認の対象となる、というルールです。
  • 21 CFR Part 170(食品添加物に関する一般規則):GRASの定義や判定基準を規定しています。中でも 21 CFR 170.30 が、GRASに該当するための要件を定めています。

FDA自身の説明は次の通りです。

“any substance that is intentionally added to food is a food additive, that is subject to premarket review and approval by FDA, unless the substance is generally recognized, among qualified experts, as having been adequately shown to be safe under the conditions of its intended use” — FDA: Generally Recognized as Safe (GRAS)

かみ砕くと、GRASとは、

「アメリカにおいて、その物質を、その用途・使用量で、食品に使っても安全であると、専門家によって広く認識されている」

という状態を指す考え方です。「原材料そのもの」が安全かどうかではなく、「その使い方」が安全と認められているかどうか、という点がポイントです。

2. よくある誤解 — 「FDAがGRASを承認している」わけではない

GRASについて調べていると、次のような誤解に行き当たることがあります。

  • 「GRASはFDAがひとつひとつの原材料を承認する制度だ」
  • 「FDAのGRASリストに名前があるから安心だ」
  • 「FDAのデータベースに載っていない原材料はアメリカで使えない」

これらはすべて不正確です。FDA自身が明確に次のように説明しています。

“FDA does not recognize or affirm the GRAS status of any substance.” — FDA: Generally Recognized as Safe (GRAS)

つまり、GRASはFDAが「お墨付きを与える」ものではありません。食品業界・専門家の間で「広く認識されている」状態を指しているだけなのです。FDAが公式に「これがGRASです」と認定するリストは存在しません。

3. GRASと判定される3つのルート

ある原材料がGRASにあたるかどうかを判定する経路は、大きく次の3つに整理できます。

ルート①:連邦規則に収載されている(21 CFR Part 182 / 184 / 186)

FDAが規則として「GRASである」と収載している物質です。次の3つのパートで、個別の物質・使用条件・上限が規定されています。

  • 21 CFR Part 182 — Substances Generally Recognized as Safe
  • 21 CFR Part 184 — Direct Food Substances Affirmed as GRAS
  • 21 CFR Part 186 — Substances Affirmed as GRAS for Use in Food Packaging

(参照:FDA GRAS関連規則一覧)

ルート②:GRAS Notice(GRN)が提出されている

企業が自主的に「この使用条件下ではGRASである」と判断し、FDAに通知する任意の制度です。FDAはその内容を審査し、結果を公開します。

提出された通知は、GRAS Notice Inventoryで「GRN番号・物質名・用途・FDAの回答」とともに公開されています(1998年以降)。

(参照:FDA GRAS Notice Inventory)

ルート③:Self-affirmed GRAS(自己認証)

企業が外部の専門家パネルによる科学的評価に基づいて、「自社としてはGRASである」と判断し、必要な安全性データを保持している状態です。FDAへの通知は任意です。

※注意が必要な最新動向:2026年8月10日、FDAはこのself-affirmed GRAS pathway(自己認証によるGRAS判定の経路)を将来的に廃止する方向の提案規則(Proposed Rule)を公表しました。最終的にルール化されるかどうかはまだ確定していませんが、これから輸出を検討される方は、この動きを念頭に置いておく必要があります。

(提案規則参照:Federal Register: Substances Generally Recognized As Safe(FDA-2025-N-3262))

4. 着色料(Color Additives)はGRASとは別枠のルール

食品の色材(着色料)については、GRASの議論とは独立した別の規制枠組みがあります。

  • 根拠法令:FD&C Act §721、関連規則は21 CFR Part 70〜82
  • 大きく次の2つのグループに分けられます
区分規則内容
Exempt from Certification21 CFR Part 73認証不要。天然由来・特定条件下で許可される着色料
Subject to Batch Certification21 CFR Part 74FDAによるロットごとの認証が必要。合成染料等が該当

参照:FDA: Color Additives

日本の着色料(クチナシ色素、紅麹色素、ウコン色素など)をアメリカ向け食品に使いたい場合は、「GRASかどうか」ではなく、「Color Additiveとして21 CFR Parts 73/74に収載されているか」という視点で確認する必要があります

5. 日本食品で見落としやすい原材料の例

日本国内で使用できる原材料だからといって、アメリカでもそのまま使用できるとは限りません。

日本では長年使用されている食品原料や食品素材であっても、米国では、使用する成分の種類・製法・純度・使用目的・使用量などによって、規制上の取り扱いが異なる場合があります。

例えば、同じ「ステビア由来」の原料でも、高純度のsteviol glycosidesと、ステビア葉そのものや粗抽出物では米国での扱いが異なります。FDAは一定の高純度steviol glycosidesについてGRAS通知に対して「no questions」としていますが、stevia leafやcrude stevia extractsについては甘味料としてGRASとは認めていません。

また、トレハロース、GABA、植物抽出物、発酵由来素材、各種機能性素材なども、「日本で食品に使われている」という事実だけで、米国での使用可否を判断することはできません。

さらに、着色料については特に注意が必要です。米国ではcolor additiveにGRAS exemptionがなく、食品への使用にはFDAのcolor additive規則による許可等が必要です。

そのため、アメリカへ食品を輸出する際には「この原材料は日本で使えるか」ではなく、「この原材料は米国で、この食品に、この使用目的・使用量で合法的に使用できるか」という視点で確認することが重要です。

まとめ — 「販売できる状態を確認してから、輸出する」

アメリカへの食品輸出で、GRASは避けて通れない最重要キーワードです。しかし同時に、「GRASさえ確認すればすべてOK」というわけでもありません。色材・施設・物流の各規制は、それぞれ別軸で動いています。

アメリカ輸出は、「とりあえず商品を送ってみる」ものではなく、「販売できる状態を確認してから輸出する」ものです。この原則さえ押さえておけば、原材料レベルの落とし穴は避けられます。

あなたの商品はどうでしょうか?米国販売可否についてなど、ご相談を承っております。まずは無料のヒアリングからお話をお伺いさせてください!お問い合わせをお待ちいたしております。

注記(Disclaimer)

本記事は、アメリカ向け食品輸出に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、貴社商品の法的判断やFDAへの法的助言を行うものではありません。原材料のGRAS該当性および最終的なFDAコンプライアンス判断は、貴社商品の成分・配合比率・使用条件・想定される用途・既存のGRAS Noticeの内容等を踏まえ、個別に確認する必要があります。輸出をご検討の際は、FDA関連規制に精通した専門家へのご相談をおすすめします。

参考リンク(一次ソース)

  • FDA: Generally Recognized as Safe (GRAS)
  • FDA: GRAS Notice Inventory
  • FDA: About the GRAS Notification Program
  • FDA: Substances Added to Food (formerly EAFUS)
  • FDA: Color Additives
  • Federal Register: Substances GRAS — Proposed Rule(FDA-2025-N-3262、2026年8月10日公表)
  • eCFR: 21 CFR Part 170 — Food Additives
  • eCFR: 21 CFR §170.30 — GRASの該当性要件
  • FDA: GRAS Substances (SCOGS) Database
  • FDA: Import Alerts
  • FDA: Food Facility Registration

注:本記事中の法令引用は2026年8月時点の情報に基づいています。FDA規則・提案規則は随時更新されるため、輸出検討時には必ず最新の一次情報をご確認ください。

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